2006年10月21日

北海道に暮らすタイ人〜サロマの15人のタイ人〜Vol:2

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いいよ、どうぞ。もう、帰るから。」それではと、ブルーのタイ人のあとをひょこひょこついていく。
着いた先は、港から300メートルほど離れた長屋ふう平屋の一軒であった。

「ごめんください。サワディー。」と中に入ると釣りに行っていなかった他のタイ人2人が顔をだした。2人とも笑顔で歓迎してくれ中に招き入れてくれた。玄関にあがると、ぷわ〜ん、と魚の生臭いにおいがした。部屋は玄関を上がってすぐに横に長い8畳ほどの居間があり、居間とつながってしきりのない3畳ほどの台所と3畳ほどの劇団の楽屋うらの化粧室兼控え室のような小部屋が、これもしきりなしにつながっていた。
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部屋の片隅には一升瓶やワインの空き瓶がダンボール箱にはいってころがっていた。玄関から入ってすぐに見える居間の奥には引き戸がありその戸には、この中の誰かがファンなんであろうタイの男性スターのポスターがところどころ破れたまま貼ってあった。その戸の奥も部屋があるんだろうがそこは、閉まっていた。台所は、「長屋の流し」といった風情が漂い、醤油、塩、さとう、酢、ナンプラーといった基本的な調味料が雑然と窓辺に置いてあり、ガスコンロ、炊飯器が2台、冷蔵庫があるという具合だ。ここには、もうしっかりと魚のにおいが染み込んでいた。先ほど釣った魚がバケツに2つ、板の間に置いてありその姿も相まって、いっそう魚臭さが強く感じられた。「冷蔵庫の中、見てもいい?」と聞くと、ちょっと恥ずかしそうに頷いてから冷蔵庫の扉を開けてみせてくれた。中にはなにやらタイの調味料となんだかわからないがいろんなものがぎゅうぎゅうに詰まっていた。下の野菜室もみせてもらうとなんとそこには、これ以上はいらないほどいっぱいの魚がスーパーの袋に入れられていた。「あれ、さっきの扉の中はもしかして?」もう一度のぞくと、わけのわからないもののうちの半分以上の正体は全部魚であった。この魚、いったいどうやって食べきるのか?どう調理するのか、もう興味津々で「サロマの長屋の流し」をうろうろ、キョロキョロするのであった。
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まずは、釣った魚を二人でしたごしらえしていく。いつもの様子いつもの手つきといった感じで次から次へと魚のうろこをとり内臓をかきだし台所の床に新聞を敷きその上にまな板をのせてさばいていく。しゃがんで魚をさばくその姿は、正しいタイ式魚の調理基本姿勢?なのだろうか。とても手際よい。日本人だったら、この体勢で魚は扱えないし扱わない。
この「魚したごしらえコンビ」はいつも決まっているのだろうか、あっという間に魚がさばかれていく。ガスコンロ周辺からはタイ語でなにやら指示する声が聞こえてくる。どうやらこの家の料理(・・)長(・)らしい。魚の下ろし方から調味料の配合、油の温度まですべてに指示をだしている。「このタイ料理店、なかなかおいしそうだぞ。」なんて思ってしまうほど、あらゆる作業が心地いいほどの分担とリズムでながれていく。ごはんを炊く人あり、使ったお皿を洗う人あり、さらにはテーブルセッティングの人まで揃っている。これは間違いなく美味しいタイ料理ができるにちがいない。

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ジュワーっと魚を揚げる音がして、まわりに油が飛び散る。すかさず、フライパンにふたをして油がはねるのを防ぐ。こうしながら、じっくりとカリカリになるくらいまで魚(ちか)を揚げていくのだ。これを揚げたにんにく、レッドカレーペーストとからめ、こぶみかんの葉をいれてできあがり。ビールのつまみになりそうな一品だ。魚を揚げたのと、調味料のにおいで部屋がタイの屋台の匂いでいっぱいになる。もちろん、けむりつきだ。この部屋の空気にむせかえっているうちに鍋には、先ほど釣ったアブラコのトムヤムプラーができあがっていた。スープにはナンプラー、砂糖、日本の酢も入っているそうだ。
みんなでおいしそうなタイ料理がのったテーブルを囲む。
「いただきます」
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箸、ではなくここではタイ式にスプーンとフォークをのばして誰よりも先にまずは「ちかのレッドカレーいため」を口にはこぶ。「ア、ロォーイ!」

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posted by 北海道タイドットコム at 23:07| Comment(2) | TrackBack(2) | サロマとタイ